「桜の森の満開の下」坂口安吾

一番好きな文学作品は、と聞かれると、
いつも「人間椅子」か「桜の森の満開の下」かで迷う。(人間椅子も語りたいことがたくさんあるりますが長くなるので、また次の機会に)

でも、春が近づくと「桜の森の満開の下」かなと言いたくなる。
言わずとしれた坂口安吾の中でも評価の高い作品である。
幻想的で、グロテスク。魅惑的な作品だ。

初めて坂口安吾に触れたのは中学生の頃、「堕落論」だった記憶があるが、正直全くと言っていいほど刺さらなかった。
どんな感想を持ったかさえあまり覚えていない。

それを父に伝えると、「桜の森の満開の下」を読んでみろと言われたので、勧められるままに読んでみたところ、ハートを撃ち抜かれたのである。
活字に色が付き、自分の周りに情景が広がり、物語にのめり込んだ。

山賊と女の感情や、女中の表情がぐいぐい心の中に入ってきたのは印象的だった。
気味の悪さやグロテスクな表現もあったが、それと桜との対比がなんとも美しく、儚げだった。

私はこの作品にかなり強く影響を受け、文体がかなり似ていたらしく、高校の頃に書いた作文の総評で指摘されたほどだ。
ちょうど時期を同じくして森見登美彦にもハマっていたこともあり、今読んでみると文体が2人の影響を受けまくりで草も生えない。
真似ていた自覚がないのが失笑ものである。

とにかく、桜の季節になるとこの作品を思い出す。
床に散らばった桜の絨毯を見ると、ラストシーンを思い出す。

読んだことがないひとがまわりに割といるので、ぜひ、一度桜が満開を迎える前に読んでみてほしい。

青空文庫の文字数を測ってみたら、スペース無視で16,815文字だった。
※1分間で500文字だとしても33分ちょいなので、すぐ読めると思う。